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令和6年4月1日から、相続登記・住所の変更登記が義務化される?要点を司法書士が解説

令和6年4月1日から、相続登記・住所の変更登記が義務化される?要点を司法書士が解説

1.相続登記ってなに?

家族が亡くなり、財産の中に不動産(土地や建物)があると、相続登記を行わなければなりません。

相続登記とは、預貯金や株式の相続手続と同様に、不動産の相続手続のことを言います。

ご家族が亡くなると、葬儀や49日の法要など大変な時期が過ぎてから、またはこれらと併行して、故人の遺産について誰がどのように相続するかを話し合い、決定していかなければなりません。

そして、遺産の中に不動産がある場合には、誰が取得するのか、そして今後どのようにその不動産を持つ(処分する)のかを考えていかなければなりません。

昨今から話題に上がっていますが、この相続登記は、「令和6年4月1日」から義務化されることとなりました。

今回は、この点に焦点を当てて、ご説明をしたいと思います。

2.相続登記手続って、何をするの?

相続登記手続は、ご家族が亡くなり、その財産を誰が取得するのか話し合った後(遺産分割協議と言います。)、その内容を不動産の所有者等の登録所(法務局が管轄しています。)にその旨申請して、所有者の名義に変更があったことを反映する手続です。

相続登記を申請するまでの手順は、次のとおりです。

なお、相続登記に限らず、相続手続全般については、以下のブログにて詳解しておりますので、ご参照下さい。

        ↓↓↓↓↓ブログはこちら↓↓↓↓↓

          -相続に必要な手続きとは?-

① 戸籍を収集する。

ご家族が亡くなると、死亡届を市区役所に提出し、戸籍上に逝去された旨の記載がされる手続を行います。

死亡届を提出すると、概ね1週間から10日間で、亡くなった旨の記載のある戸籍が完成することになります。

相続登記手続では、通常

 ・故人の出生から死亡までの戸籍謄本

 ・故人の死亡時の戸籍の附票

 ・相続人全員の現在戸籍謄本

 ・不動産を相続する相続人の住民票

を添付することになります。

したがって、これらの戸籍を各人の本籍地のある市区役所にて取得していかなかければなりません。

日本の戸籍は、明治5年式戸籍から始まり、コンピューター化戸籍など、いくつもの様式変更があったため、1通の戸籍にて出生から死亡までの戸籍とすることができません。

したがって、通常出生から死亡までの戸籍を取得しようとすると、複数通の戸籍を取得することになります。

なお、現在では、コンビニエンスストアなどで戸籍謄本も取得できるようになりましたが、これは現在の戸籍謄本のみで、過去の様式の戸籍謄本は取得できませんので、ご注意下さい。

② 誰がどの財産を取得するか、話し合い決定する。

誰がどの財産を取得するか、話し合い決定することを「遺産分割協議」と言います。

遺産分割協議により、誰がどの財産を取得するのか決定したら、これを書面により作成し、全員が実印を押印します。

遺産分割協議書に規定の様式はありませんが、

 ・誰の相続で(故人の氏名・本籍・住所など)

 ・いつ亡くなり

 ・どの財産をどれだけ誰が取得したのか

については記載されている必要があります。

③ 相続人全員が実印を押印する。

相続人全員で2で作成した遺産分割協議書に実印を押印します。

「相続人全員」とお伝えしましたが、ここには、故人の相続人全員が捺印をしていなければなりません。

1枚の紙に全員が捺印をしている必要はありませんが、一人でも印鑑が欠けると、有効な遺産分割協議とは言えません。

家族のうち一人が海外に居住している場合や、遠方に居住している又は所在が分からないなどの場合にも、同様となります。

実印にて押印をしたら、上記に記載した戸籍謄本等と併せて、相続人全員の印鑑証明書も添付してもらいます。

戸籍謄本については、相続の機会に全員分の戸籍を取得することができますが、印鑑証明書については、各相続人でないと取得ができません。

印鑑カードを預り、代理で取得することもできますが、通常は各人が区役所(又は個人カードを使用してコンビニエンスストア)にて取得することになります。

2.相続登記の義務化について

タイトルにも記載したとおり、上記にご説明した相続登記は、令和6年4月1日から義務化されることになりました。

併せて、若干の相続登記手続に関する手続の簡略化もなされる予定です。

今般の法改正では、次の点が改正されています。

① 相続登記の義務化

② 相続登記手続の簡略化

③ 相続人申告登記制度の創設

以下には、これらを簡単にご説明したいと思います。

① 相続登記の義務化

今般の民法改正があるまでは、相続登記に関して申請義務は課されていませんでした。

今般の法改正により、

 1 相続又は遺贈(相続人でない方が受け継ぐ場合)により所有権を取得した場合

 2 法定相続分により一旦相続登記された後に、遺産分割に基づき所有権を取得した場合

 3 相続人申告登記がされた後に、遺産分割に基づき所有権を取得した場合

に、正当な理由なく登記申請を行わなかった場合に、10万円以下の過料に処される可能性があります。

この登記申請義務を負う方は、遺産分割により所有権を取得した方(自身が受け継ぐと話し合いで決めた方)です。

そして、この期限は、
 自分のために相続があったことを知り、かつ不動産の所有権を取得したことを知った日
から
 3年
となっています。

「自分のために相続があったことを知り、不動産の所有権を取得したことを知った日」とは、簡単に言えば、「ご両親などの親族が亡くなったことを知った日」です。

なお、2.3に記載してある、「遺産分割により~」の部分は、法定相続分により取得することが確定した場合には、法定相続に基づく相続登記を取るだけで、追加の手続が必要なわけではありません。

そして、この3年間の起算は、

 ① 義務化される前に相続があった場合と

 ② 義務化後に相続があった場合

とに分かれます。

①の場合は、令和6年4月1日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。

そして、②の場合には、この日以後から3年以内に相続登記を行わなければなりません。

いずれも、「3年」という期限がありますので、ご注意下さい。

② 相続登記手続の簡略化

例えば、とりあえずの仮で法定相続分により相続人全員が取得した旨の相続登記をしたとします。

そして、この後に

 ・ 遺産分割協議をした場合

 ・ 相続放棄をした場合

 ・ 遺言が見つかった場合

について、従来は持分を失う人と取得する人が連名で手続を取る必要がありましたが、これが取得した人のみで手続を取ることが可能となります。

持分を失う人の関与がいらないということは、

 ・ その方の署名捺印(実印)がいらない

 ・ その方の印鑑証明書がいらない

(・ その方の持分の権利証がいらない)←まだ、仮定です。

ことになり、手続としては楽になる部分が多いと思います。

ただし、一般的に仮で法定相続分に基づいて相続登記を行うことはあまりありませんので、実際の部分としてはそこまでの簡略化とはされていません。

③ 相続人申告登記制度の創設

改正法では、相続登記の申請義務に関する規律が設けられましたが、この義務を負う方が、自らが相続人であることを申し出ることにより、相続登記の申請義務が履行されたものとみなされる旨の規定も設けられました。

これは、相続登記を行うとすれば、相続人の確定から誰が取得するのかの確定等、複雑な判断や手続を行わなければならないため、

 ・ 連絡が取れない親族がいる場合

 ・ 合意できない相続人がいる場合

などに、義務として重くのしかかってしまいます。

したがって、これを避けるための手段として、

 相続人が法務局において、相続が開始した旨及び自身が相続人であることを申出

することで、相続登記を行うべき義務を履行したものとみなす規定が設けられました。

申出にあたっては自身が相続人であることを証する情報として、戸籍謄本等を添付する必要があるようです。

話し合いが進まず、期限に間に合わないという方は、10万円の過料を避けるために、とりあえずこの申告の登記を行っておくという方法も良いかもしれません。

3.氏名住所の変更登記の義務化について

相続登記の義務化と併せて、不動産の所有者に住所や氏名の変更が合った場合にも、手続をすることが義務化されました。

以下に、詳細を記載したいと思います。

① 義務化の詳細は?

氏名や住所の変更があった場合、従来においては、申請するか否かは所有者の自由に任されていました。

しかし、今般の改正により、相続登記手続と同様に手続が義務化されることになりました。

義務化の詳細は、次のとおりです。

 ・ 所有者の氏名住所に変更があった場合

 ・ 所有者が申請を行う義務を負う

 ・ 氏名住所に変更があった日から2年が期限

 ・ 手続を取らなかった場合、5万円以下の過料

② 申請によるところもあれば、自動的に登記されることもあります。

相続と異なり、氏名住所の変更については、人生において複数回あることですので、個々人の負担が特に大きい改正と言えます。

したがって、この負担軽減策として、法務局が住基ネットに定期的に照会を行い、ここから、法務局が所有者の氏名住所に変更があったことを把握した場合には、職権で変更登記手続を行うことになりました。

住基ネットでは、氏名住所の変更はもちろん、個人が死亡した事実も把握できますが、死亡の事実に関しては、死亡した旨しか把握ができませんので、上記の相続登記もしなくて良くなるわけではありません。

なお、この氏名住所の変更については、ストーカーやDVの被害者への配慮から、個人については、申出があった場合に限り、職権で自動的に住所変更登記がなされるようです。

したがって、法人については、申出なくして自動的に本店移転や商号変更による所有者の変更登記手続が取られることになるようです。

4.面倒な登記に関しては、司法書士に相談

相続に必要な手続きとは?司法書士に相談
ここまで、相続登記・氏名住所の変更登記の義務化について記載しました。

ご自身でされるには負担であったり、よく分からないなどのご相談は、お気軽にご相談下さい。

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