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終活とは?遺される家族のためにしておいた方が良いポイントを司法書士が解説

終活とは?遺される家族のためにしておいた方が良いポイントを司法書士が解説

1.いまさら聞けない、終活ってなに?

「終活」という言葉を耳にしてから、しばらくの年数が経ち、言葉も定着してきたように思います。

以前は、終活と聞いても、「大学生がするもの?」「もう就職しているよ」など、「就活」と聞き間違えるなんてことも多かったのでは無いでしょうか。

今回は、この終活に焦点を当て、そして司法書士目線で何をするべきなのかを書いていきたいと思います。

まず最初に、「終活」を(私なりに)定義付けするならば、

 「終活とは、次の世代へ課題を残さないこと」

だと考えています。

今回は、この定義付けを意識しながら、後の記事を読んでいただければ幸いです。

①健康寿命とは

突然ですが、皆様は、ご自身の寿命があと何年あるか分かりますか。

これを聞かれると、皆さん大体90歳から100歳程度を自身の寿命として捉え、自分の年齢との差をお答えになります。

ということは、この寿命までに、終活を終わらせていれば良さそうですね。

では、質問を変えます。

 「あと何年、元気でいられそうですか。」

この質問にすると、先ほどの質問の答えより、少し短くなるでしょうか。

ここで皆様には、一つのキーワードを思い出していただきたいのです。

それは、

 健康寿命(身体が元気で、認知症にもなってない)

というキーワードです。

私が関わらせていただいた方々は、この言葉はもちろん知っているよという方が多かったのですが、これを意識されていた方はそう多くありませんでした。

なぜこんなことを伺ったかといいますと、先にも書きましたが、実は、「終活」は寿命を迎えるまでに終わらせてあれば良いのではなく、健康寿命を全うするまでに終わらせておかなければならないことであるということをお伝えしたかったからです。

どんなに身体が元気でも、頭がしっかりしていないと、難しい契約や遺言など、手続きを進めていくことが難しくなります。

また、どんなに頭が元気でも、身体がしっかりしていないと、手続きで関係各所を回ることができません。

という意味で、

 「終活は、健康寿命を迎えるまでに終わらせておく必要があるんだ」

ということを、最初に覚えておいていただきたいと思います。

②終活はいつから取り組めばいいの?

この答えは、簡単です。

やろうと思い立ったときです。

恐らく、この記事を読まれている方は、そろそろ考えないととお考えの方だと思います。

ということは、終活に興味を持つ何らかのできごとがあったのではないでしょうか。

 ・年齢的に、そろそろ考えておかなければ・・・

 ・昨年病気をして、将来が少し不安になってきた・・・

 ・身内の突然の不幸に、人ごととは思えなくなった・・・

など、人それぞれの理由がおありだと思います。

病気の検査をしていても、確実に病原が見つかるとも言い切れません。

自身に起こることは、誰も予想ができないということを意識していただきたいと思います。

③終活って、実際に何をすればいいの?

お持ちの財産によって異なりますが、備えとして(私個人の意見として)考えておくべきことは、概ね次のことになります。

 ・遺言を作成しておく

 ・定期預金を普通預金に切り替えておく

 ・金融機関で、信頼できる家族を代理人登録しておく

 ・信託で、自身が認知症になったときに備えて、財産の管理を家族などに委託しておく

 ・終の住処を考え、自身が入所したい福祉施設に目処を付けておいたり、家族と協議しておく

 ・今居住している家を、今後どうするのか再度検討しておく

 ・老後の保険について、再度検討(ライフプランナーに相談)しておく

 ・株式などの有価証券は、家族と協議の上、不要なものは売却しておく

 ・自身の財産を整理して、相続税などの検討(税理士への相談)をしておく

 ・家族や大切な人に感謝の気持ちを日々伝えておく

2.財産の種類に応じて変わる終活

財産の種類には、様々なものがありますが、ここでは、終活としてできる、代表的な財産の対策を挙げていきたいと思います。

私も自身の家族の終活として、色々な方法を模索し、そして実践してきました。

ここでは、私が実際に行って気付いた経験などをお伝えしたいと思います。

①預貯金

昨今、自身の財産を管理してもらう契約として、「財産管理委任契約」を公正証書にしておき、これを基に、本人に代わって銀行での振込をしたり、お金を引き出したりすることが良くなされているようです。

しかし、この制度、広島県ではあまり普及しておらず、私も自身の家族に試しで作成をしてみましたが、いざ作成して金融機関の窓口に行ってみると、「取扱がない」として、手続を断られてしまった経緯がありました。

このため、これに代わってお勧めする対策は、金融機関での

 代理人登録

の制度です。

金融機関においては、当然お金を振り込んだり下ろしたりといったことは、本人でないとできません。

本人の財産ですし、あとで勝手に下ろされたなどと金融機関が訴えられたら、金融機関もたまったものではないからです。

代理人登録とは、本人と代理人になる親族が一緒に金融機関に赴き、予めその親族を代理人とする旨金融機関に登録しておくことで、これ以後の預金引き出しといったことを、その代理人が本人に代わって行うことができるというものです。

預金引き出しを銀行窓口で行うとしても、その場合の本人確認は、代理人において行われますから、本人の関与が不要になるというメリットがあります。

 ・ご本人の頭は元気だけど、足腰が弱まってきた。

 ・銀行周りをするのが大変になってきた。

などの場合に活用できると思います。

ただし、すべての金融機関で対応が可能かは確認が必要となりますので、制度として押さえておいていただき、実際の金融機関には、お問い合わせいただければと思います。

また、代理人登録と一緒に考えておいていただきたいことは、

 定期預金を普通預金に切り替えておく

ことです。

定期預金は、使う予定のない預金を、定期で預けることにより、利子配当を多くもらえるというものですが、いざ使いたいときに自由に使えるかというと、使うことができません。

満期前に使おうとすれば、定期預金を解約する旨の手続が必要になります。

先ほどの代理人登録を行っていたとしても、定期預金を解約するといった手続きには応じてもらえない金融機関が多いと思いますので、予め手続しておくこともご検討下さい。

いざ、自身が施設に入所するなど、お金が必要になったのに下ろせない...なんてことを防ぐためにも、事前に普通預金に切り替えておけば、預金の引き出しが可能となるため、一つの方策として、把握しておくと良いと思います。

②不動産

不動産で対策ができることと言えば、遺言や信託で、今後誰がその不動産を引き継ぐのかを決めておくことだと思います。

ご存じのとおり、不動産は現金と異なり、切って分けることができません。

かといって、複数人の共有としておいても、利用することが難しいものです。

したがって、ご自身が元気なうちに、お持ちの不動産を、

 ・誰に引き継いで欲しいのか

 ・引き継いで欲しい本人は、引き継ぎたいと言っているか

 ・誰も引き継がないであろう不動産は、売却する

ことも確認・検討してみてください。

不動産を沢山お持ちの方がお亡くなりになった場合、不動産を相続しても、相続税などの税金は金銭での支払いを求められます。

したがって、相続税以上に不動産を遺す場合には、相続人にとっては負担にもなり得るということを覚えておいていただきたいと思います。

③株式などの有価証券

株式などは、その時々によって価格が異なるため、専門の業種の方ではない限り、いつ売って良いのかという判断がし辛いと思います。

株式をお持ちの方の中には、退職した勤務先の株式を退職時に買った場合など、縁故によって所有されている方も少なくないと思います。

株式の相続手続には、意外と手間が掛かることも多く、相続人が相続してから売却を望む場合でも、一旦相続手続をしてから売却する必要があるなど、相続人には思った以上の負担となる場合があります。

元気なうちに家族と話し合って、持っている株式などの有価証券が本当に今後も必要なのかという検討もされることをお勧めします。

④各種保険

ご自身が加入している保険、キチンと整理できていますか。

私が関わった相続では、意外と、故人も相続人も、故人が入っていた保険を把握されていなかったということが多いように思います。

最近では、色々な保険の種類が揃っているようですよ。

例えば、最近私が耳にした商品では、「リビング・ニーズ特約」というものがありました。

生命保険のうち死亡保険は、被保険者が死亡した場合に死亡保険金が受け取れるという契約になっています。

そのため、死亡保険は残された家族のために加入するというのが一般的です。

しかし、リビング・ニーズ特約を利用すれば、被保険者に一定の余命期間が告げられた場合に、死亡保険金の一部または全部を生前給付金として受け取ることができるようです。

是非、自身が現在入っている保険に加えて、今後必要になりそうな保険についても、ご担当のライフプランナーなどに相談してみて下さい。

3.エンディングノートって、なに?

エンディングノートは、以前は一大ブームとなり、情報番組などでも紹介されることが多かったのですが、最近は取り上げられることも少なくなりました。

しかし、実は現在も本屋さんに数多く並んでいます。

様々な出版社のものがあり、その出版社ごとに書いてある内容も異なっていますが、エンディングノートとは、

 「法的な意味合いのない遺言(ゆいごん)」ですね。

なお、法的な意味での遺言は、「いごん」と言います。

今後自身がすべきことが体系的にまとめられているもので、何をいつまでにどれだけやったのか、やるべきかなどをメモしていくノートですね。

ご家族に対し、財産の内容や所在、感謝の言葉など、色々なことをまとめることができると思います。

法的な意味合いはありませんが、ご家族に自身の意思や財産の内容を伝える術としては、有用なものであると思っています。

法的な「遺言(いごん)」についてお知りになりたい方は、参考として、私が以前執筆した遺言に関するブログ記事のリンクは貼っておきます。

よろしければご覧下さい。

相続に必要な遺言書|種類や作成手順をご紹介します

4.更に詳しい内容をご希望の方は、司法書士にご相談下さい。

相続に必要な手続きとは?司法書士に相談
ここまで、様々なことをご説明しましたが、いかがだったでしょうか。

なぜ終活をする必要があるのか、そして終活にはどんな内容のものがあるのかについてを主に、その輪郭を説明させていただきました。

以前書いたブログ記事を参考にしていただくとともに、次回以降の記事にも遺言や信託等に焦点を当ててご説明致しますので、皆様の参考となれば幸いです。

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